「えっ、もう終わったの」



車の中で電話する健吾くんを店内で待っていた私は、買い物も終わらないうちに追いついてきた彼にびっくりした。



「うん」

「怒られた?」

「うん」



やっぱり緊張したんだろう、疲れたような顔をしつつ、それでも晴れやかさが見える。



「ふりじゃないと思うって言ったの?」

「言う前に、そう思ってるんでしょって言われた」



あら…。



「もうすっげえバカバカ言われて、最後には、『すっきりしたから許してあげる』って」

「笑ってた?」

「声は笑ってたけど」



炭酸水のペットボトルを棚から取りながら、「たぶん泣いてた」とぽつんと言う。

その声に潜む痛みに、どうしてそんなところだけ鋭いのかとかわいそうになって、こっちまで胸がツンとした。


慰めたくて、肩に頭を載せる。

健吾くんはお礼を言うみたいに、私の頭に軽く頬ずりをした。


ねえ靖人。

こんなふうに、気づかなくてごめんねって伝えられたら、私たちにもなにかのケリがつくのかな。

そうは思えないよ。

だってもう、お隣さんには戻れないって言ってたもんね。

なにを言ったところで、もうこれまで通りにはなれないんだよね。


私、どうしたらいい?

このまま学校が始まっちゃったら、私、つらすぎるよ。

でももしかして靖人は、今までずっと、つらかったの?

私のせいで?


健吾くんたちと同じ状況のようでいて、違うのはなぜなんだろう。

これが大人と子供の差?

まさかね。



「あ、しまった、郁送ってくんだから、飲めねーじゃん」

「私、タクシー使うよ、飲みたいなら飲んで」

「バカ言うな」