さすがの俺もそれには腹が立ち、
立ち上がろうとしたが采羽は
それをさせなかった。
多分…采羽はさっきのを防げたんだ。
でも、それをしなかったのは
俺達が後ろにいるからだ。
なんで…守ろうとしてんだよ…


俺達がお前を守らないといけないのに…
逆に守られてるじゃねぇか…


その時…采羽の言葉を俺は多分…
一緒忘れることはない。


「私はもう守られるのは嫌なんだ。
私は…無力であることに甘えたりしない…

これ以上…この2人を傷つけることは
絶対に許さない」


俺は正直疑ってしまった。
これが本当に采羽なのかと…
采羽はただ笑っていた…
幸せそうに…誰よりも幸せそうにしていたんだ。
それを今は真逆だ。

自ら傷ついて守ろうとしている。
そんなことをする奴じゃ…なかったのに…


「ここまでとは思わなかったよ…君達」


後ろから聞こえた声に俺達は
振り返った。
そこには怒りぎみの冬吏さんと
慌てて采羽に近づいていくレムの姿。
レムは口から流れている血を
指ですくい舐めた。


「大丈夫か?」

「大丈夫ですよ、クロ」


クロ?


レム…クロはそっと采羽を抱き締めた。
こいつのこんなに和らいだ顔をみるのは
久しぶりのような気がする。


「君たちはもうクビですね。
ですので、私達が手を出しても何の
文句もありません。」


そう言うと、冬吏さんは一発ずつ男を
殴ってから俺達に向き直った。


「さて、星空、君はもう少し頑張ってくれ
紅葉は話があるから。
クロウと采羽はもう帰っても大丈夫だよ」


采羽とクロウが帰ってから俺は
別室に冬吏さんと向かう。