幾年の愛を



目を覚ましてから私は出しておいた服に身を包む。
カツラとカラコンはもういいかな…
今日でここともさよならだし。
イヤなことしかなかったな…
いい思い出なんて何一つないよ。


そうだ。枯捺さんに一応連絡入れておかないと…
心配かけちゃだめだしね…

そう思い、電話をかけてみたものな
いっこうに出る事はなかった、

また、後で連絡してみようかな…


外に出てみるともう車はとまっていた。
近くまで行くと中から出てきた
澪さんに抱きしめられた。


「もう待ってたよ!」

「遅くなりました。」

「大丈夫だよ。采羽、澪が興奮してるだけだから」

「ちょっ!藜!」


ほんとうにこの二人は仲がいい。
それはいいことだけど…


弟と姉っていうよりも、兄と妹に見えてしまう。
このことは黙っておこう…


そんなこんなで騒いでいると運転席の方から女の人が降りてきた。
一瞬…母に似ていると…思ってしまった。


「初めまして采羽様。私、冬吏様の秘書を
しております、榊夏帆です」

「あ、よ、よろしくお願いします!」


慌てて頭を下げると夏帆さんは
目を細めながら私のことを見ていた。
やっぱりこの人…どことなく…母に似てる気がするな…

「采羽」


と、そんなことを考えていると、
後ろの方からレムさんの声が聞こえた。

後ろを振り返ると案の定、そこには
レムさんの姿があった。