幾年の愛を



朝起きるとすぐに園長に呼ばれた。
こんなこと今まで無かったんだけど…
制服に着替えてから向かった。

二回ほどノックしてから中に入る。

「失礼します…園長、話しとは…」

「あぁ…座ってくれ」


園長は嬉しそうに私をソファに座らせ、
いつもならしない事を私にしてきた。

あぁそうか…そんなに私に消えて欲しいのか…
だったら出て行けと言えばよかったのにな。

私の前のソファには男の人が座っていた。
多分私はこの人に連れて行かれる。


「初めまして采羽さん。私は伏見冬吏。
君の兄だよ」


私の…兄?
そんな訳ない…だって私には要にか
いなかった…
あの人しか、私の兄はいないはずだ。

私が顔を上げると、男の人は優しく微笑んでくるだけだった。

信じていいものか…この人だってきっと
私を捨てるんだ。皆みたいに
私はいらないって…捨てる。


「驚かせてしまったみたいだね。
私は要の二卵生でね…」


二卵生…そうなればなんで似ていないのかはだいたい想像ができる。
だからってこの人が本当に
私の兄かどうかなんて分からない。


「今まで君を探していたんだが、遅れてしまった。本当にすまない…」

「い、いえ…別に」


私はわからなくなっていた、
本当にこの人は兄なのか…
信用していいのか…