私が睨んでいるのも気にする様子もなく、
しゃがんでいた男は立ち上がった。


「怪我は?」

怪我?この人…私の態度わかって
言ってるの?
お礼すらしてないのに…


「ないです…」

「そうか…よかった」


その人は本当に優しそうに微笑み、
私は見とれていた。

この人は本当に人間何だろうか…
こんなにきれいな人…見たことがない…
あ、でも…今日会ったあの2人も
綺麗だったな…

と、くだらないことを考えていると、
男は私の頬を手でなぞりなから
聞いてきた。


「怖かっただろう」

「いえ、別に…」


平気なわけないのに…
私は…人に嘘をつくことに慣れすぎた。
この人にも…こんな態度なんて…
馬鹿じゃん…


「お前が無事ならそれでいい…」


下げていた頭を上げると彼は無表情のまま
言っていた。
何なんだろうこの人…なんか、
懐かしいような気がする。


「俺には全てを吐き出せばいい…
俺は何時もお前の傍にいる」

「どうして…」


あぁ…どうしたんだろ私…
この人だってあいつらと同じ人間だ。
信用なんてしていいもんしゃない。
なのに…とうしてこんなにも…
この人の傍は安心するんだろうか…

そして、彼は最後にこういった。


「俺はずっと傍にいる」


その後、後ろを見ても彼の姿は
そこにはなくて…でも、私は…またすぐに
あの人に会うと思った。