「嘘…碧……」


嬉しさで涙が溢れ出す

せっかく頑張ろうと思って
拭いたばかりなのに!!!!


こんなの嬉しくて涙が止まらないよ


こんなに近くから碧がまた見られるなんて


例え碧いから私の事が見えなくても

碧の視界には誰もいない私の部屋だけが
写っているとしても。


触れ合う事も会話する事も許されないとしても。






私はそう思いながら結界の壁に手を置く
後何センチだろう。すぐそばに碧がいる。



「おい。何勝手に学校変えてんだよ」

「え?」

「てか凄い泣きっつら。」

「…え?!」


碧がそう言うと手を伸ばしてきた

バン

「ウォッ、何だこれ……見えない壁??」

あれ?あれれ??

「碧…私が見えるの?声、聞こえる?」

「何言ってんだお前。
不細工な美桜なら見えてるぞ。」

声も…聞こえているんだ




あぁ。神様ありがとう。




「っつうかお前何で学校変えてるんだよ」


「そ、それは…じつはね!」


碧に私の姿は見えているんだ
それならきっと魔法の事を話したって


「魔法が使えるみたいなの」

「あ?ソフトクリームがなんだって?」

「え?だから、魔法が」

「え?、ドーナツ?」

「魔法!!!」

「団子?!」


どうして…全然違う単語に…
て言うか美味しそうなスイーツに…

「おまえふざけてんのか?」

「ふざけてないよ!大真面目だよ!」

やっぱりこれは言えないんだ。
どんな言い方をしてもきっと書き換えられる

「泣いてたけど。大丈夫かよ」
「うん。碧に会えたから落ち着いたよ」
「新しい学校、どうだ?」
「うん。陽菜乃も一緒だから楽しいよ!」
「げ!陽菜乃もやっぱそっち行ってるのか」


10分くらいかな
中学一緒だった子達の話やら
世間話やらをしてあっという間に過ぎた


「いたいたー!久我っちー!
そんな所で1人で何話してるのー?」

道の方から1人の女の子の声がした
あの制服は…私達3人で通うはずの高校のもの…

碧の同級生…?

「は?1人じゃねぇだろ。ここに美桜が…」
「何言ってるのー?1人だよ!
それより部活〜!入部届け貰いに行ったのー?」
「やべっ!忘れてた!今そっちに行くー!」

碧は、焦って木から降りようとした
「相変わらず忘れっぽいの?」
「ウルセっ!じゃ、俺行くわ。またな!」
「…うん。」

向こうでは女の子が待っている

ここで行かないでって言わないと
行けないんだろうけどなぁ。

会えたことは奇跡でも
事情も説明しない触れ合えもしない女の子より

同じ学校の女の子と普通に青春をって…


どうしてもネガティブな思考になってしまう


「美桜」
「うん?何?」
「絶対お前に会いに行くからな」
「ふふっできるかな?会えたら良いね」
「俺に不可能はねぇよ!じゃ、またな!」

そう言って碧は木から飛び降りた

コツン

音がなって自分の指先から痛みが伝わる

指が思いっきり壁に当たったのは
その後ようやく理解した。




頭では考えててもやっぱり


“行かないで”

体はそう言っていたんだろう。

碧を、呼び止めようと
無意識に自分の手を伸ばしていた。



触れることが、できないと分かっていたはずなのに