学校のチャイムが鳴るまで五分を切った時、再び教室のドアが開かれた
「皆、おはよう!」
緩やかなツインテールをなびかせ、可愛い笑顔でクラスメートに挨拶をした
「おはよう、蛍ちゃん」
「蛍ちゃん、今日も決まっているね!」
わたしの時とは打って違い、皆は彼女に挨拶をし、敬意を寄せる
そして彼女だけ……
「おはよう本田さん」
愛嬌のある笑顔を向けて挨拶してくる
ここで挨拶を返すのが常識だろうが、わたしは何も言わずに彼女を見た
次第に彼女の笑顔は歪んだものに変わり、
「──折角、わたしが挨拶しているのに返事しないとかいい度胸してるじゃない?」
机に置いていた濡れている雑巾を掴み、わたしの顔に押し付けた
明るい声色なのにオーラが黒い
「蛍ちゃん、それ触っちゃダメだよ。 汚いよー?」
「そーそー、汚い物は汚い者が持つのがお似合いなんだから」
再び笑いが漏れる教室
「……フンッ、あんた自分の立場をわきまえなさいよね」
鼻を鳴らし、後ろ側の席へ向かい、座った
異臭が鼻をつく
濡れた髪が顔に張り付いていた


