「──そうね。 アンタにいじめ慣れしているわたしの気持ちなんか知るはずが無いよね」


「あぁっ!?」


わたしは前髪を両手であげた


二階堂蛍の顔が青ざめているのがわかる


「驚いた?」


わたしの顔には額のほぼ中央から左目にかけて切りつけられた後がある


前髪が長い理由は傷を隠すため


「これね、小学生の時に負わされた傷。 向こうは"綺麗にしてあげる"という悪ふざけでカッターでザクリ、としたの」


「……」


「いじめって言うのは向こうが認めなければ成立しない。 自分が何度"いじめ"だと言っても向こうが"遊び"と思えば終らない。 ……それが現状なの」


わたしは座っていた跳び箱から飛び降りた


前髪を整え、倉庫へ続く扉に手をかけた


「いじめなんて終わることない連鎖だから、慣れないと生きていけないから。 ……気づいた頃からずっとそうだったからね」


彼女を倉庫に残したまま、わたしはその場を後にした