彼と出会ったのはその年の春だった。





「あー暇だなぁー」





病人と言ってもまだ重くないし、気持ちは陸上部のまま。





最後の大会、出たかったな…





ガラガラッ




その人は突然私の部屋の扉を開けた。





「………ん?」

「………」

「あんた、誰?」





いや、こっちが聞きたいわっ





「桜坂結芽。あんたこそ勝手に入ってきて誰よ。」

「俺?そんなの聞いてどうするのさ」

「は!?あんたが聞くから聞き返したんだろうが!!」




こいつといると病気が悪化しそう。




一刻も早く出てってほしい。





「俺は春宮 奏(ハルミヤ カナデ)。あっ!!」

「大きな声出さないでよ…!」

「なあ、俺ら名字に二人とも“春”がついてる!」

「は?私、桜坂 だけど。」

「桜=春 じゃん
そんなこともわかんないとかアホだな」





なんで初対面のお前にそんな事言われなきゃいけないんだよっっっっっ





突っ込みたい心を必死で抑えた。





「だいたいあんたいきなり入ってきてなんなの?」

「あ、俺、部屋間違えたんだった。
なあなあ、313号室ってどこ?」

「ここは307号室ですけどっ
313は向かい側の少し行ったところ。
だいたいここ突き当たりなんだからわかるでしょ」

「あーそーなんだ、ごめんごめん
俺の兄貴が骨折して入院しててさ。
暇だろうから遊びに来てやったんだよ。邪魔して悪かったな、じゃーな!」





ガラガラッ ピシャッ





………………なにあいつ






名乗ってそのままでていきやがった。





でも、いい暇つぶしにはなったな。






でももう来なくていいよ←