それは、ゆっくりと始まった。





キーンコーンカーンコーン






「結芽ー、体育行こー!」

「うん!」





私、桜坂 結芽(サクラザカ ユメ)は高校二年生。





いつも通り体育の授業のため運動場へ向かっていた。





「じゃあランニングしてくださーい」





先生の号令でみんな一斉にグランドを走る。





私は陸上部に所属していて、長距離は得意中の得意だった。





だからいつもは体育で走るぐらい余裕だったのに、その日は違った。





「結芽、どうしたの?
いつも私たちを抜かしてるのに今日は私の方が速いよ?」




なぜか息切れがすごかった。




「あんたが速くなったんじゃない?」

「お、まじ?
私吹奏楽部だけど陸上部に勝ったー♪」




その日は本当にしんどくて、先生に言って途中から見学した。




「ちょっと疲れが溜まったのかもね。
今日は部活も休みなさい。」





保健の先生に言われてその日は部活に出ずに帰った。




部活するために学校行ってるような私が帰ってきたからお母さんはかなり驚いてたみたいだけど。笑





その日1日休んだら、次の日はまた前みたいにすごく元気になった。





先生の言う通り、疲れが溜まってただけだったんだ。





それから数週間後、大会前というだけあって毎日膨大な練習量をしていた。





もちろん苦しかったが、それは頑張りすぎてるせいだと思って睡眠時間を伸ばすぐらいしか対策をとらなかった。





また、時々の立ちくらみが多くなった。




多分貧血だからビタミン剤を飲んでこれもそれだけで対策は終わった。





大きな変化があったのはそれからさらに数週間後の大会前日だった。