「…愛花ちゃんさ
それは違うんじゃねぇ〜の?」



「え?」




「愛花ちゃんは一生懸命彼氏のことを
思ってたんだろ〜?

なのに愛花ちゃんの気持ちを踏みにじったのは彼氏で、浮気してたのはあっちなんだから愛花ちゃんが下手(したて)に出る必要ないよ」







「……本音言ってみ?今の気持ちは
そんな綺麗なもんじゃねぇだろ〜?」










ーーーー成瀬さんは、凄いなあ。










「…本音、ですか。

そうですね、綺麗なんかじゃありませんよ。
先輩が私のことを保険だとかなんだとかほざいたことも浮気していたことも許せないし、
私がいることを知っていたのに先輩と浮気した加恋さんも許せない。


大体保険ってなに!?

あんなに優しくしといて
人から初めてを全部奪っといて
最後には最初から好きじゃなかった。
って人の心なんだと思ってるの!?

しかも誕生日に他の女連れ込むとか、
ありえない………ありえない……っ
先輩ばか、あほ、最低!最低……!」




溢れ出してくる、真っ黒な気持ち。

誤魔化し続けていた、気持ち。

私の、本音。




ああ、もう。

涙なんか出てこないでよ。

やめてよ。



もう先輩のために涙なんか流したくないんだってば。










「うんうん、それでいいんだよ。
…無理に言わせちゃってごめんね。

でも俺でよければ話聞くから、一人で悩んで抱え込んだりしちゃ駄目だからね。
愚痴でもなんでもいいからさ、ね?」






日向君といい、成瀬さんといい
どうしてこんなに優しいんだろう…。