ああ、……


成瀬さん、後ろーーーーー





「……成瀬」

「え?」





成瀬さんが後ろ…つまり日向君の方を向いた瞬間





「お前は本当に俺を怒らせるのが好きだな?
今すぐそこからどけ。3秒以内にどかなかったら追い出す。すぐさま追い出す。3、2、1…」





「ああ!!わかったわかったから〜」




カウントダウンが終わる前に一応布団からどいた成瀬さんを蹴り飛ばし部屋の外へ追いやった日向君は満足そうに





「じゃあ今日はゆっくり休めよ」

私にそういい部屋を出て行った。





「ぎゃっ!!痛い痛いよ、日向っ」


「黙れ。早く歩けのろま」



バンバンっという音がしながら遠ざかる声。




それに思わず吹き出す。









一気に静まり返った空間にほんの少しの居心地の悪さを感じて、布団に潜った。




一人で寝るの久しぶりかもしれない。


…先輩は寝るときだけは絶対に隣にいてくれた。





思い出したくないのにぐるぐると頭の中を駆け巡る先輩との思い出。







「寝れない?」


意地悪そうな顔をして聞いてくる先輩に


「……寝れません」



そう答えれば優しく頭を撫でてくれた。






その時間が幸せで、



本当に幸せで、














……幸せ、だったのに。









「もう寝る!寝るぞ。私は寝る」



静かな空間にいるとどうしても考えなくていいことも考えてしまう。



それを阻止すべくイヤホンをしてお気に入りの音楽をかけながら目を瞑った。