…私がこうなったのは、つい数分前のこと。





一人暮らしの高校生の私。

高校生で一人暮らしって珍しいね、なんて言われるのはもう慣れたもの。


家族が死んだとか、捨てられたとか、そんな大層な理由があるわけじゃない。


両親も同意の上での一人暮らし。



小さなアパートの二階で静かに暮らしていた。

最初は一人暮らしが凄く寂しかった。



夏の夜は、風鈴の音さえ怖くて、雷がなった日なんかは音楽を大音量にしないとやってけないくらいだった。


怖いテレビはCMを見るだけで、その日の夜は眠れなかった。



でも、1年前からはそんな怯えた生活もなくなった。



それは


「いってらっしゃい、先輩」


「ん、いってくる」


ーーーー彼氏が出来たから。




斎藤 徹。サイトウ トオル


同じ高校通う一個上の先輩。

さらさらと靡く漆黒の髪が印象的で、切れ長の目が色っぽくて、先輩を纏う空気はなんだか魅惑的だ。