「どうやらまたぼっとしてたようだ」

「リーフが居ないから、この屋敷の責任感じて疲れてただけさ。ほら、ゆっくり休め」

 ムッカは敢えて見なかったフリをし、散らばった鍋を片付けながらマスカートを気遣った。

「あ、あの、食後のお茶でも入れましょうか?」

 ジュジュも何事もなかったように話を逸らした。

「そうだな、ゆっくりとお茶でも飲もうか」

 マスカートを支えたムッカは、ジュジュの機転にウインクで感謝の気持ちを表していた。

 ジュジュは台所から出て行く二人の背中を見送った後、大急ぎでお茶の仕度をしだした。

「なんだかわからないけど、この屋敷は複雑に何かが絡み合い、そして自分の知らない秘密が一杯ありそう」

 独り言を洩らしながらジュジュは湯を沸かしていた。

 ここにカルマンが居れば、色々と訊き出せそうだったのに、カルマンはあいにく食事のあと、やるべき事があるらしく自分の部屋に篭ってしまった。

 またそのうちに色々と話してくれるだろうと、気長に待つことにした。

 その前に自分がここに居られるかどうかが鍵だった。

 その決定権を持つあともう一人いるここの主、リーフの事が急に気になる。

「リーフってどんな人なんだろう。もしかしたら、リーフがあの時助けてくれた人なのだろうか」

 早く会ってみたいと思いつつ、なんだか会う時が怖いように思え、ジュジュは再び不安になりだした。

 どうか事がうまくいきますように。

 リーフに好かれますように。

 そんな事を願いながら、お湯が沸きあがっていくのをじっと見つめていた。

 外は段々と暗くなり、闇が流れてくるように暗くなってきた。

 その暗さに隠れて何かが現れようとしていた。

 そしてそれはこれからジュジュを更なる冒険へと導いていくことになるのだった──。