「……どうしてなんだ。なぜ、私から離れていったんだ。私のどこが一体悪かったというのだろう。あんなに信頼し合ってたのに。なぜ、なぜ…… なあ、ジュジュ、私には何が足りないんだ? 私を見てどう思う? 正直に思った事を教えてくれないか?」

 マスカートは話を突然振ると、ジュジュに詰め寄り、自分の顔を近づけた。

「おいおい、マスカート、やめろよ。また悪い癖がでてるぞ」

「悪い癖ってなんだよ。どうしてもわからない事を訊いてるだけじゃないか」

「だから、マスカートはいつも振られた彼女の事を思い出すと、自分の世界に入り込んで暴走するんだよ。いい加減に目を覚ませよ」

「何が原因かわかれば、そこを直したいんだよ。私はもうあんな辛い思いをしたくないんだ。そして、次、失敗しないためにもその原因をはっきりと知りたい。それは必要なことだと思わないかね」

「そこに、前の彼女の未練がはいってるだろ。愚痴愚痴とずっと続くから後始末悪いんだよ」

「だってさ、お互いとてもうまくいってたのに、前触れもなく彼女が去っていったんだ。一体私の何がいけなかったのか全くわからない。私はあんなに愛してたのに」

「何回言えばわかるんだ。だから、彼女は他の男が好きになったんだって」

 ムッカがいい加減にしろと呆れた顔を向けると、マスカートは益々納得がいかないとジュジュに助けを求めた。

「ジュジュ、女って簡単に好きな人を替えられるものなのかい?」

「えっ、それは…… そんなことないです。やっぱり好きな人が居たらその人一筋になると思います」

 ジュジュもなんだかムキになってしまう。

 自分もまた、あの時抱いた感情があるからここにいる。

 その人を一途に思っているからこそ、とことん追求したい。

 マスカートの気持ちを汲んでやるというより、自分のやってることを肯定したようになってしまった。

「ジュジュ、真面目に相手にするんじゃない」

 ムッカが突っ込んだ。

「そうだよな。でも彼女は他の男を選んだ。この私ではなく、あいつを……」

 マスカートの瞳が焦点を定めずに過去の記憶に入り込んでいた。

 それを追い求め、マスカートは彷徨うように歩き出した。

 ムッカは手が付けられないと呆れ、ジュジュは心配そうに見つめていた。

「マスカート、大丈夫でしょうか」