それは秘密!王女の婿探しは陰謀の果てに?

「方角を占っただけだ。ここから南を目指す」

「えっ、南? あらまあ、なぜにそっち方面? そこに行けば王女がいるの?」

「わからない。だが、王女の覚悟を決めた意気込んだ思いがそこの方角に反応した。その後を追うしかない」

「あなたのその力があれば、きっとジュジュ王女を見つけられるわ。その時は魔術で王女を自分に惚れさすのよ」

「いや、それはできない」

「どうして? 自分に自然に惚れてほしいという自惚れ?」

「違う。それが、ここの王族には私の力は通じない」

「えっ、どういうこと?」

「なぜか知らぬが、余程の強い力を持ち、魔力を弾くとしか言えない。ドラゴンを意のままに制するだけ、やはり強力な力が宿っている」

「あなたの力が及ばないなんて」

「何も悲観する事はない。私の力が弾くのなら、それはそれで面白いと思っている。却ってその方がいいし、私も本気が出せる」

「そうよ、そしてこの国を手に入れるのよ。そして本物の魔王になればいい」

 エボニーは邪悪な笑みを向けた。

「ちょっと、待て。それでは我々は悪役ではないか」

「悪役でもなんでもいいわよ。とにかく王女を捕まえてここに連れてきなさい。その時は王女に惚れられてないといけないわよ」

「ああ」

 セイボルは馬に跨り手綱を手に絡ませた。

 その後はエボニーを力強く一度見て、そして足で馬の腹を蹴り上げる。

 体が黒く艶やかに光るその馬は、セイボルを乗せ、森の中を軽やかに走っていった。

 その姿を見つめ、エボニーは祈るように、弟の行く末を案じていた。