「いいか、これからは心を入れ替えるという事が条件だ」

「わかった。僕、いい子になるよ」

「お前は、ガキか!」

 その様子をバルジはモンモンシューと戯れながら見ていた。

 マスカートが薬草を作り、それを飲ませた一時間後、カルマンの目は次第に見えてきた。

 嬉しさのあまりマスカートに抱きついた。

「あっ、見える、見えるよ! やった! ありがとうマスカート。やっぱりマスカートの薬草は即効性が違うね。本当にすごい。僕の魔術なんて比べ物にならないよ」

「わかったから、離れなさい」

「さて、落ち着いたところでリーフの書斎を片付けるか」

 バルジが向かうとモンモンシューも後をつけていた。

 残りの三人も同じようについていく。

「へぇ中はこんな風になってたんだ。俺、初めて入った。隠し扉なんかあるんだ。すげぇ」

 珍しそうにムッカは見ていた。

 マスカートは隠し部屋で見たアレ──即ちそれはオーガの仮面と衣装である──をじっと見ていた。

「このオーガの衣装がこの屋敷に二つあるとは思わなかった。そうかこれはリーフ、いや、セイボルの分だったのか。これがあの使用人の部屋に置いてあったものか」

「ああ、そうだ。セイボルはたまにアレを来てこの屋敷周辺を脅かしてたんだ。その後で衣装を脱いでまたセイボルの役をしたりして、いかにもこの森を支配しているように振舞った」

「そしてリーフのフリもした訳か。大変だなセイボルも」

 着替えているところや、演じ分けているところを想像すると、笑えてきてしまい、マスカートは一人で受けていた。

「使用人の部屋は誰も使わないし、忘れられていたから、あそこに衣装を置いて気軽に外と中を出入りしていた。長く使わない時は隠したのだろうが、頻繁に着替えないといけない時は、面倒臭くなったのかもしれない。私もこの屋敷を充分に管理しきれてなく、ジュジュがあの部屋に案内された時は気がつかなかったんだ」

「なる程、道理でバルジらしくないと思ったぜ」

 ムッカも笑っていた。

「あれ、これ…… そうだ、この絵だ」

 カルマンが落ちて裏向いていた額縁を拾ってまじまじと絵を見ていた。

 マスカートとムッカが覗き込むと、そこには鏡の前で髪を梳いて、かわいらしく笑っている少女のスケッチ画があった。