「お願い。あなたにしか頼めないの」

 自分の部屋にこっそりとグェンを呼び出し、ジュジュは手を合わせてすがるように頼み込んでいた。

 部屋に置かれたランプから発せられる暖色の光が、ジュジュの真剣な瞳に入り込んでは、心の炎を燃やすようにその心情を表していた。

 あどけなさと、一生懸命すがるその瞳に圧倒され、グェンの視線が定まらず揺れている。

「ジュネッタージュ様、そんな恐れ多いこと……」

「わかってるわ。これが許されないことぐらい。でも信じて、必ず戻ってくるわ」

「いつお戻りになられるのですか」

 ジュジュは少し迷うように考え込んでから言った。

「うーん、そうね、はっきりと決めるのは難しいわ。自分でその時が判断できれば、いつでも戻ってくるわ。でもあんまり長くここを離れるのもよくないのもわかってるわ。期限を決めるなら、来年の自分の誕生日ってことでどうかしら」

「一年後ですか? そんなに長く」

「あなたには長いかも知れないけど、私には一瞬の時になるわ。本当ならここから逃げ出したいくらいだけど、それはできない。私にも王女としての責任があるから。だからほんの一時でも、自由になって好きな人を追いかけたいの」

「それでは、ジュネッタージュ様は好きな人がいらっしゃるってことですか?」

「ええ、いるわ」