森の中は穏やかに、鳥達が囀り、太陽の日差しを受けて木の葉の間から光が漏れていた。

 カルマンは伸びをしながら深呼吸する。

 一人気ままな時間が持てて楽しんでいた。

 カルマンには皆に内緒で作った隠れ小屋がある。

 隠れ小屋というくらい、ちょっとそれなりに細工して他の者には見つかりにくい工夫がされている。

 唯一ジュジュにはその存在を教えて、その小屋へ辿り着ける鍵となるアイテムも渡していたが、ジュジュはすでに忘れている様子だった。

 ジュジュが屋敷に住めるようになったので、そんな小屋など今は必要なくなったが、いつかはその小屋でジュジュと二人で過ごしたいとカルマンは願っていた。

 ジュジュならきっと気に入ってくれると独りよがりに思いこんでいる節があった。

 いつかはジュジュを招いて、そのうちに…… などと思いを馳せ、その準備に余念がない。

 カルマンは懲りずにとんでもない事を頭の中で計画していた。

 その小屋に向かっている途中、突然繁みからガサガサという音が聞こえ身構えた。

「まさか、オーガ?」

 カルマンに緊張が走ったその時、

「た、助けてくれ……」

 と、消え入りそうに助けを求める声が耳元に届いた。

 カルマンは繁みをかき分けて中を覗き込んだ。

「あら、ラジーじゃないの。何してるのこんなところで?」

 血を流して傷を負ってるのに、カルマンは心配も何もなかった。

「助けて…… く……れ」

 ラジーは目を潤わせ必死に助けを求めている。

 カルマンはそんな事どうでもよかった。

「あんたのお仲間は、傷の手当を受けて今朝街へ帰ったよ。ラジーの事怒ってたけど、ムッカが庇ってさ、許してやれって言ってたよ。よかったね」

「えっ?」

 カルマンはニコッと笑顔を見せ、そして去ろうとした。

「ちょ、ちょっと……」

「ん? 何?」

「何って、助けてくれないの」