ジュジュが頭に思い浮かべた人物と、マスカートが口に出した人物の名前がこの時ピタリと一致する。

「あいつはリーフの従兄弟さ」

 ──リーフ

 ジュジュが見た事があると思ったのは、今朝すでに会ったリーフの顔と似ていたからだった。

「双子の兄弟じゃなく、従兄弟?」

「ああ、結構顔が似てるだろ。リーフとセイボルの母親が双子の姉妹だったらしく、どちらも母親に似たために、従兄弟でも顔が似てしまったんだ。しかも誕生日も近いから年も一緒だし、背格好までそっくりだ」

「だけど、二人は対立しあってるの?」

「それは、敵意を持ってるくらい、酷く対立してるぜ。何せセイボルは魔王と呼ばれるくらい、黒魔術に精通してて最強なんだ。それでオーガも手懐けて、この森でも態度がでかく、リーフにその力をみせつけてるのさ」

 ムッカが言ったあと、続いてカルマンが付け足した。

「その点、リーフは魔術が全く使えない。熱心な勉強家で教養はあるけど、一方で自分とよく似た人物は魔王と呼ばれ、そして侯爵という地位まで持ってるだけに、劣等感が激しいんだ。セイボルのせいで性格が歪んでしまったと言う訳。まあ、わからないでもないけどね。だからリーフは魔術と聞くだけでもすごく嫌がるんだ。一種の病気だね」

「そうだったの。あの冷たそうな雰囲気も、そういう事が絡んでたのね。だけどただのリーフの嫉妬じゃないのかしら。セイボルはそんなに悪い人じゃないと思うわ」

「ジュジュはすでにセイボルに騙されてるんだよ。狙った獲物に本性出して近づくはずがないじゃないの。セイボルは魔術が使えるんだよ。ジュジュをコントロールするくらいお手のものだよ」

 カルマンはジュジュの甘さを指摘する。

「セイボルがジュジュに近づくなんて、もしかしたらこれは何か裏があるのかもしれないぜ。とにかく早く屋敷に戻ってリーフに報告しないと」

「ムッカの言う通りだ。すぐに引き返そう」

 マスカートは先頭を切って歩く。

 その後をムッカも続いた。

 勝手に話が進んでいき、置いてけぼりを食ってしまったジュジュが戸惑っていると、カルマンに袖を引っ張られた。

「ジュジュ、何もたついてるの。早くおいでよ」