それは秘密!王女の婿探しは陰謀の果てに?


 朝の散歩で、外に出ていたモンモンシューは、冷たい森の空気が気に入ってあちこち飛び回っていた。

 縄張りを荒らしたと見なされて、自分より大きなカラスに攻撃を仕掛けられたが、そこは負けられず、口から火を吐いて撃退していた。

 小さい体であっても、ドラゴンには変わらない。

 カラスが怯んで飛び去っていったことで、少し威厳を取り戻していた。

 気分もよく、元気が漲(みなぎ)って、モンモンシューは森の深くまで入り込んでいく。

 人間があまり踏み込まない神秘な森。

 何が潜んでいるのかわからない怪しさもあるが、木漏れ日が差し込む緑の中はキラキラと輝いて、モンモンシューは好奇心たっぷりに夢中になって楽しんでいた。

 繁みの葉や実を食べている小動物たちと時々すれ違えば、近くまで寄って挨拶し、小鳥達が小さな木の実をついばんでいると、それを真似して一緒に味わってみる。

 すっかり森の住人になったように、モンモンシューは馴染んでいた。

 だから、ふいに体を捕まれるなどとは考えられず、素早い動きで一瞬のうちに人間の手の中に納まっていた時は、モンモンシューも驚きのあまり呆然としていた。

 ぎゅっと握り締められ、身動き取れない。

 じろじろと自分を観察する、目の前にいる男を敵意を持った目で睨みつければ、男は優しい笑みを浮かべた。

「何も取って食おうとか思ってない。安心しろ」

 モンモンシューの敵意はすぐに喪失し、目をパチクリして見ていた。

 観察が終われば、モンモンシューはあっさりと解き放たれた。

 すぐさま、素早く男から離れるも、急激においしそうな匂いが鼻をつき、その匂いの元をくんくんと鼻を動かしてその方向を見れば、干し肉が差し出されてた。

「遠慮せずに、食べていいんだぞ」

 モンモンシューは迷いながらも、空腹には勝てず、動物の本能でそれに手を出してしまった。

 引ったくってはすぐ咀嚼する。

 また、もう一つ差し出され、二度目は若干落ち着いて手を出した。

「まだあるぞ」

 沢山餌を提供され、モンモンシューはすっかり気を許し、危なくないと判断した。

「どうやらお前は、天空の国の麓に住むドラゴンだな。だが魔術がかけられているようだ。だから小さくなったのか」

 自分にかけられた言葉など上の空で、モンモンシューは干し肉を満足げに食べていた。

「赤魔術か…… いや、また何かが違う複雑な魔術だ。魔術にしては不思議な粘りがあり、かなり強力でやっかいだ。これは魔術をかけた者しか元に戻せない。 しかし、急ぐこともないだろう。まあ、当分はその姿の方が便利に違いない。とにかくしっかりとジュジュ王女の側に居てやれ。それじゃ、また後でな」

 踵を返すと男の長い髪がなびいた。

 その後姿をモンモンシューはキョトンとして見送っていた。