それは秘密!王女の婿探しは陰謀の果てに?

「むやみに手を出さないでよ。ムッカはすぐに暴力奮うんだから」

「馬鹿、これは暴力じゃない。お仕置きみたいなものだ。お前は大げさで、ほんとに人聞きの悪いことばかり言うよな」

「とにかくさ、皆はジュジュがここにやってきてなんとも思わないのかい? 僕はとても興味があるな。それにジュジュがここに来た理由が、助けてくれた時のお礼をしたいってことだろ。こんな危ない森の中に女の子一人でやってくるんだよ。これって、その助けて貰った人に会いたいから来たってことじゃないの?」

 カルマンはいたずらっぽい笑みを浮かべて、意味ありげに一人一人の顔を見ながら問いかけた。

「お前は一体何がいいたいんだ?」

 マスカートが苛立って言った。

「んもう、皆、わかってるくせに紳士ぶるんだから。これって、好きな人に会いに来たってことなのさ。助けて貰った時に惚れたってことなんだよ」

「ちょっと待てカルマン。それって俺達の中の誰かに惚れてるってことなのか?」

 ムッカが思わず声を張り上げた。

「でも、それだとおかしい。ジュジュは私達とは初対面のように見えた。それに私達もジュジュの事ははっきりと覚えてない」

 珍しくバルジが反論した。

「ジュジュにはきっとなんらかの事情があったんだと思う。助けて貰った時、意識が朦朧としてたとか、気が動転してたとか、恐怖やショックで記憶があやふやになる状態だったんだと思う。だからジュジュも誰に助けて貰ったかはっきりとわかってない。この屋敷に来ればそれがわかると思ったから、彼女は無理してここまでやってきたんだよ」

「まあ、カルマンのいう事が正しいと仮定して、だったら一体この中の誰がジュジュを助けたんだ。助けた方はさすがに覚えているんじゃないのか?」

 マスカートが一人一人の顔を見ていく。

「マスカートがその質問をするという事は、あんたじゃないってことだね。それともただ思い出せないだけなのか……」

「そういうカルマンも、該当者じゃなさそうだぜ。お前なら、『ぼく、ぼく、ぼくだよ』って真っ先に自ら主張して、自分にわざとらしくジュジュに恩を着せようとするだろうし」

「なんだよ、ムッカ。皮肉っぽい言い方だな」

「はぁ? お前の方が10倍も辛辣な言い方するくせに」

「僕は、いつも真実を語ってるだけさ」

「よくそんな事がいえるな」

 ムッカはまた手が出そうになり、拳を振り上げると、カルマンは受けて立とうと咄嗟に構えた。

「二人ともやめるんだ」

 マスカートが間に入り止めた。

 それでも燻った状態が続き、ムッカとカルマンはマスカートを挟んでちょっかい出し合っていた。

 三人が揉めている時、一人バルジだけが考えごとでもするように、うわの空になって突っ立っている。

 マスカートが違和感を持って見つめると、残りの二人もバルジの行動が気になって動きが止まった。

「バルジ、どうかしたのか?」

 マスカートが訪ねたが、バルジの体は微動だにしなかったとはいえ、ぼんやりとしていた瞳が急に焦点を合わせて少し不安定な動きを見せた。

 その一瞬を三人は見逃さなかった。

 バルジはそれを誤魔化そうとする。