放課後、誰もいなくなってから私はあることをする。




先生がいつも立つ黒板の前。




チョーク入れの中に1つだけ綺麗な白いチョークがある。





それは佐藤先生のチョーク。






他のチョークとは違って後ろにDと掘ってある。





彼女さんから貰ったりしたのかな。





ならダメじゃん、こんなところに置いてちゃ。




私、使っちゃうよ?






そのチョークを手に取って『佐藤大貴』と書いてみた。





「ハハ、私、字下手だなぁ」





乾いた笑い声が教室に響く。





先生、こんなこと言ったら困りますか?





私は先生のこと、大好きなんです。





黒板消しを手に取って書いた文字を消した。





筆圧が濃い私の字は完全に消えることは無かった。





先生も筆圧が濃いから日直のとき消すのに一苦労する。





「先生、一緒だね。おそろいだよ。」





私は何を言ってるんだか。





こんな事言ったって先生に想いが届くわけじゃない。






「好きなのに…」





誰かが戻ってくる前に行かなきゃ。





荷物を持って下校した。





何人かの生徒にすれ違った。





「あれ、知里?なに、今帰んの?」





同じクラスの翔太だった。





「うん。翔太、こんな時間までなにしてんの?」

「図書室で勉強。
お前こそ何してんだよ」




ギクッ



先生と重なりたくて黒板の前に立ってました。

とは言えず。





「私も勉強。」

「どうせ帰るんだから一緒に帰ろうぜ。」





翔太、こいつ何考えてるかわかんないから苦手。





だからあんまり話したくなかったのにな。