「向こうに行ったら、最低三年は戻れないんだぞ。そんなに離れていたら、君はきっと、俺のこと忘れる」
「忘れるわけないでしょう?私だって、喜んで送り出すわけじゃない。でも、やらなきゃいけないことがあるなら、やっておくべきよ」
背中を軽くさすってあげる。
「俺の代わりはいくらでもいる。三年も、君のそばを離れたら、ここにこうしているのは、多分俺じゃない。他の誰かだ。だから無理」
「無理って。どうしちゃったの。無理じゃなくて。他にも方法があるでしょう?それをどうにかして考えてるんじゃないの」
「方法はない。だからこの話は終わりだ」
「もう、頭が固いんだから」
私達は、年明けからずっとこんな議論をしている。
「裕二さん?コーヒーは?」
「ああ、そこに置いて」
そして、沈黙。
その後は、ずっと無視。
取り付く島もない。
この人は、頑固だ。
一度こうだと決めたら、滅多なことでは意見を覆さない。


