長いキスの後、彼が私に聞いた。


「報告書はどうした?」


「一応、まとめてあります」

彼の表情が、少し厳しくなる。
仕事のことは、どうでもよかったんじゃなかったの?

「希海あのさ、天野たちから申告受けたときの、データって記録取ってないよな?」

「いいえ。取ってありますよ。全部データにして持ち歩いてます」

「少なくとも数日前のやつ。データ入って無いときのだぞ」

「はい。もちろん。営業部の社員全員分取ってあります」

「営業部、全員。本当か?それ」
よかったと、ほっとした顔をした。

「前に、なるべくそうしろって、言ったじゃないですか」

「よかった」
彼は、私の頭を軽く撫でた。

「どうかしたんですか?」

「噂が発覚してから、データがきれいに上書きされてたんだ。だから、こっちの主張が、少し弱かった。でも、これで大丈夫だ」

彼は、私をもう一度抱きしめた。