「多少、先を急いだところで、自分自身が満たされていなければ、充実した人生は送れない。仕事も大切だけど、誰かと人生を分かち合わないと、進んだ先には何も残らないんだって悟ったよ」

「本当に、それでいいの?」

「君こそ、俺でいいのか?」

「どういう意味よ?」

「月島さんのところに戻りたいんじゃなかったの?」

私は、首を振って否定した。

「それは、うちの課も誰かが出て行かなきゃいけないって思ったからです。月島さんのそばに行きたかったわけじゃありません。国崎君や恵麻ちゃんは仕事覚えたばかりだし。辞めさせたくなかった」

「覚えたばっかりっていうのは、君についても言えることだろ?人材開発は新設された課だし、減らすことは考えてない」

「じゃあ、ここに居ていいんだ」

「もちろん。でも、今回のような軽はずみなことは、止めるんだぞ。だから、この件は全部俺に任せて」

「はい」


「わかればいい」

彼は、ご褒美に優しいキスをくれた。