「いつです?」
声が震えそうになるのを何とかこらえた。


「契約は、来年の3月まで。でも、業務が落ち着いていれば、その少し前からかな」

「そうですか」


「だから、君が出て行くことはない」


「どこにでも行けばいい。課長なんか、外国でも、どこにでも」


「いいのか?俺が遠くに行っても」


「いいに決まってる。課長に何も期待してないもの。課長がいなくても、好きな人見つけて付き合って、結婚して幸せになって、みせます。
そういえば。課長今頃何してるのかなって、一年に一度思い出せばいいです」


「一年に一度か。それは淋しいな」

「本気で思ってなんかいないくせに。私の姿が見えなくなると、すぐに私のことなんか忘れるくせに」


「そんなことないよ。俺の気持ちが分かってないのは、君も同じだ」


「さあ、ずいぶん飲んだし、もう出ようか」
課長は、私を抱えるようにして、店を出た。