あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ

あの時と同じ席に、二人で向き合った。

ほんの少し前で、その時のことをよく覚えている。

でも、今の気持ちは、あの時の気持ちとは少し変わってきている。

あの時は、ただ相手のことをまっすぐ見つめていた。

でも、今は……
あの時よりも気持ちは高ぶっているのに、それを表すことが出来ない。
変な状況に置かれていた。

何しろ、私たちの間には未来がなくて、私は一時しのぎの関係だって釘を刺されたのだ。


「栗原、何か俺に言うことはないか?」
どんなに心配そうに見つめたって、これは、彼のポーズなんだ。だから、信用したらダメだ。

実際の彼は、私のことをその場しのぎに考えていて、ここを去るときに関係も終わるってしまうんだから。

「なにもありません。もし、私が知らない間にご迷惑をかけていたら、申し訳ありません」

「迷惑なんかかけてないさ」
私はため息をついた。

「それなら、もう話すことなんてありません」


「そうは行かないだろう」
課長は、ため息をついた。


「私から何を聞き出したいんですか?私の方から何も言うことはありません」


「困ってるさ。聞きたいことは山ほどあるし、冷静に聞く自信もない。思った以上に難しいよ。どうにもならなかった」

「ふざけないでください。何とかなるんでしょう?いつもそうしてきたように」


「それは、どうかな。それより、何か食べよう。お腹が空いた」

「課長、こんな時に食事だなんて」

「そのイライラ、腹が減ってるせいだろう」