宮崎さんが、いきなり話題を変えた。
「国崎くん、あのね、人事で極秘に営業部の社員の調査してるって聞いたけど、それって本当なの?」
いつものように、三人でお昼を食べに来てた
国崎君が、顔を上げた。
「いいや。俺は何も聞いてないけど」
「国崎君も、知らないんだ」
宮崎さんは、そのまま興味をなくしてしまった。
私は、どこでその話を聞いたのか知りたかった。
「宮崎さん、その噂ってどこで聞いたの?」
私は、彼女に聞いた。
宮崎さんなら、なにか知ってるかもしれないと思ったのだ。
「私は、営業の子たちから直接聞いたんだけど」
噂を聞いた子は、それほど事情をよく知らないと言っていたみたいだ。
しばらくして、宮崎さんの言う通り、営業の方から人事のやり方に不満が出ていると噂が流れた。
営業で話題になってるのは、人事部が、従来の査定方法を変えて、新しくする。そのために独自でヒアリングを始めてるというものだった。
人事部の方針としては、今のところそう言った計画はない。
という回答だった。
噂の元は、私が余計な行動をしたからだ。
私が勝手に始めたことを、課長に報告していいものか考えた。
というのも、勝手にした調査が、人事がやりたいことにとって、不利なのかどうなのか分からないことだった。
そんな状態で、これを渡していいものかどうか判断できなかった。
私は、月島さんに聞けば、何かわかるだろうかと思って、彼に連絡を取った。
本当なら、自分の上司、藤原課長に報告すべきだ。
しかるべき問題点を上げ、どんなふうに対処すべきか考えなければならない。
でも、そんなふうにできなかったのは、藤原課長をこのことに、巻き込みたくないと思ったからだ。
巻き込みたくないと思ったところで、彼がこの課の責任者なのだから、何かあれば無関係でいられないのに。
「いいから、顔を上げろって」
目の前に現れて早々、月島さんに言われる。
「嫌です」
「そうか、お前は何をしたんだ?人の顔がまともに見られないようなことしたのか?」
「違います」
「だったら、顔を上げてまっすぐ見ろ。自信持て」
「だって……」
「だって、何だよ。ちゃんと説明しろ。ほら」
「だって、せっかく藤原さんが作り上げてきたものがダメになっちゃう。苦労して作り上げてきたものが、私のせいで壊れてしまう」
「壊れるって、何が壊れるんだよ」
「藤原課長が大事にしてたこと」
「なんだ、それ?」


