それから天野君は、約束通り協力してくれた。

『今度は退屈させないから、もう一度、どう?』
そんなふうに軽口をたたいてくるけれど、内密に営業の仲間に聞いてくれたのだ。


彼が、上層部に話が漏れないように気を使ってくれて、さらにその中から人選をした。

私は、営業部の人事に不満があるという人数人と会って、話を聞いた。

そのうちのほとんどが、不満だと調査書に書いたのに、記録上残ってないということになった。

「もしこれが、ちょっとしたミスじゃなくて、組織的に行われたものだったら、ちょっと考えるな」

「何を考えるの?」

「働きたいと思い続けられるかどうか」

「そうだね。気持ちは分かるな」


一人なら、書き忘れもあり得る。

でも、数人一度に。

しかも、不満があり異動願いや天野君のように、真面目にスキルアップをして頑張ってる社員の方が空欄になってるのは、やっぱりおかしい。

そろそろ課長に報告しなきゃいけない。