「いつからこういうところに出入りしてるの?」
音楽で聞こえないから、大声で言う。

「学生の頃かな」

「大学生?」

「いいや」

「高校生?まさか」思わず身を乗り出してしまう、

「一度や二度、何てことないよ。大人っぽい格好してお忍びで来るのさ」

「そっか、田舎の高校生とは全然違うね」
私はその頃、ひたすら学校とバイト先を往復する日々だった。

「君は?なにして遊んでたの?」

「たいして遊んでないな。バイトばっかりだったから」

「バイト?」

「そう。私エビスヤでずっと働いてきた」

「レストラン?」

「レストランも売り子もやったよ」

「へえ、見かけによらないんだな」
天野君は、驚いたって顔する。

「見かけ?どんなふうに見えるのよ」

「管理部門って、テストがよくできて、いけ好かないやつだって思ってたよ。あの、塩崎っって女いるだろ?あいつは最低だ」

「恵麻ちゃんが?どうして」

「あいつのおかげで、俺は管理に行けなかったんだ。テストの点で俺は、あいつに毎度敵わない」

「本当に、いけ好かないわね。彼女」私も同じように笑う。

「でも、あんたのことは、いけ好かないとは、最初から思ってないよ」

「どんなふうに思ってるの?私のどこに魅力があるのよ」

「気になる?」

「もちろん」

「じゃあ、教えてやるよ。二人っきりでな」