彼に言われるままに外に出る。

人の流れと逆らって、私は天野君についていく。

大通りから外れていって、いかがわしい雰囲気の店が多くなってきてる。

この辺りが、怪しい通りだということは、私も知っている。

ホテル街があったり、酔っ払いがうろついてたりとか。


こういうのは、テレビでしか見たことのない。

つい、物珍しくてきょろきょろ見てしまう。

「なに?ホテルにでも入りたいの?」

「ち、違います。って、何を言い出すの」
動揺してるのがバレバレだ。
今時、高校生だってこんなことで慌てたりしない。


天野君は、黙って先を歩いて行く。

大きなオブジェの門がある店の前で立ち止まった。

彼が先に中に入っていく。

天野くんは、二人分のお金を払うと、中に入るように私の背中を押した。

なに?ここ。

中は、大音響の音楽が鳴り響いてる。
とても会話が出来る雰囲気ではない。

クラブみたいなとこ?
なんて聞いたら、田舎者丸出しよね?

きょろきょろ場の雰囲気を確かめるような様子に、興味を引かれたのか、天野君は大胆に距離を詰めて来た。

「まだ時間が早くて、人が集まってない。席について飲むか」

「うん」

天野君は、人が集まってないっていうけど、店の中はフロアに出て体を揺らして踊ってる人もいるし、私たちのようにお酒を飲んでる人たちもいる。
これで、人がいないのか。なんて思った。

「いいよ。酒はおごりだから。今日ずっと付き合ってくれれば、君に協力してもいい」

「本当?今日って?」

「そうあな。ジャスト12時。それより先に、君が俺から離れたら協力はしない」

「時間まだ、だいぶあるね」

「飲んでいれば、すぐだよ」

良かった先が見えて来た。