「えっと……」

珍しく課長から呼び出された。

「塩崎から聞いた。渋谷支店の営業のやつと会ったんだって?何かあったのか?」

まさか、昨日の件がすでに課長の耳に入っているとは思わなかった。

「いいえ、別に大したことありません」

「そうか。それでもちゃんと報告しろよ」

「はい」

最近は、恵麻ちゃんは国崎と親しくしている。

だから、国崎君は、彼女と情報を共有している。

二人で話してるうちに、私が営業部の社員に会っていたのが分かったのかも知れない。

恵麻ちゃんは、私に相談するより、課長と吉沢さんを頼るようになっていた。

すでに、恵麻ちゃんは、三人の味方をして、私に批判的な発言するようになってきている。

そうなると、ますます私のいうことを聞いてくれなくなっていた。

国崎君は、もともと藤原課長の言うことしか聞かない。

私の話なんか聞いてくれるだろうか?


だから、話を切り出すには勇気がいる。

「国崎君、ちょっといいかな?」

彼は、すぐに来てくれた。

「昨日の事、課長に話したの?」
責めてるように聞こえないないか気を付けて話した。

「ああ。話したよ。塩崎が課長に、営業の社員に会いに行ったこと話してたから、データに不備があるかもしれないって言ってた、お前の話そのまま伝えたぞ」

「報告は、自分でするって言ってたのに」

「その場で出た話題になったから、フォローしただけだって」」

「どうして、許可なく勝手に課長に話すの?国崎君だって、問題があったからって、すべて同僚に話すわけじゃないでしょ?」

国崎君が、どう受け止めるか分からない。
ついこの間までは、出来ていたことが出来なくなっている。


「時と場合による」国崎君がなかなか引き下がってくれなかった。