私は、咳払いして一呼吸置く。


「課長が、そういう仕事ばっかりさせてるの?自分からそろそろ違う仕事してみたいなあとか、思わないの?」まあ、課長は本人から申し出ないと面倒見ようとしないだろう。

国崎君が手伝えるようになるまで、課長は多くの仕事を抱えていて、体がいくつあっても足りない状態だった。

そんな状態では、人の面倒まで見られない。

「それは……思わないこともありませんが」


「ちょっと、こっち来ない?」
私は、彼女に向かって手招きする。


「嫌です」間髪入れずに断る恵麻ちゃん。

気を取り直して、相手かまわず一方的に話しかける。



「新人社員研修頼まれてるんだけど、私が受けたのはずいぶん前だし、記憶にないからなあ」


「何が知りたいんですか?」
協力的モードだ。

「えっと……これが、新人社員研修の資料ですけど」
ガサゴソとファイルを探してくれる恵麻ちゃん。
ほら、彼女に頼むと異様に探すのが早い。

「これが実際に行った今年のプログラムです。『ビジネスマナー』『仕事の進め方』が中心で、座学が主の短い研修でした」


「ふ~ん。それで?」


「はい。出来ればもっと……いろいろやりたかったなと」