私は、社長にヒントをもらって、ここに来るまでにまとめたことを話した。
課長は、途中で口を挟まずに聞いてくれた。

「それで?」

「ですから、早急にグループ会社全体のセミナーを見直して、ダブっているものや必要ないものを洗い出します。そして、現場で必要とされてる内容をアンケートして……」


「ちょっと待て。慌てるなって。そんなに大掛かりなものは、一度には無理だろう」
ようやく、表情が柔らかくなった。


「はい。すみません」


「どうして謝る?」
課長が距離を詰める。


「まだ、足りないのかと思って」


「確かに。足りないな」
課長がこっちへ来いって手招きしたから近づいて行った。

彼の指が、すっと伸びて来て私の唇に触れた。

「希海?これ、何つけてるの?」


「はい?」


「ケチャップ?」
何か見極めるためなのか、顔を近づけてくる。


「あっ、さっき国崎君のナポリタン、少しもらったのがついてたんだ」
口を拭こうにもカバン一式、置いてきた。

ふうっとため息をつく彼。


「お前なあ。まだ全然、わかってないだろ。俺が何に腹立ててるのか。バカ」

「バカって……」

「取ってやる。よく見せろ」

「はい」
少しだけ、顔を上に上げる。