という訳で、私は走りながら考えてる。
企画書に落とすのは、課長が理解を示してくれてからだ。
大まかな流れだけでも説明しよう。
課長がまだ帰らずに残っていてくれたらと思った。
フロアに戻ると、彼は、ちょうど帰り支度をしているところだった。
「ちょっと待ってください」
ギリギリ間に合った。
「なんだ?」
彼が、私の姿を認めて振り返る。
課長が、ファイルに入った書類をビジネスバッグに入れるのを防ごうとした。
防ぐのに、彼の手をつかむ理由はないんだけど、そうしたのは、きっと彼の手に触りたかったから。
「か、考えましたから待ってください」
走って来て、息が上がってる。
「何を?」
「企画です」
呼吸を整えながら言う。
「どれ?」
「えっと、企画書は、まだ書いてません」
「ん?書いてないって」
彼の瞳が大きくなる。
私ったら、スパゲティのソースつけたままで来たんじゃないだろうかと心配になる。
「まだ、頭の中にあります」
「それで?」
彼は、腕を組んで考えている。
「今、ここで話してもいいですか?」
「そのために、汗だくになって走って来たんだろ?」
「ああ、そうしたいならそうすれば」
半分は、どんな理由でもいいから顔見たかっただけですけど。