[主従決壊の怪]




語り手:蛙身世 水若(かわずみよ みずわか)




「こんにちは、新入生さん。私は蛙身世 水若。実家は寺だから、怪談は身内から比較的多く聴いています。

え?だから着物を着てるのかって?いやいやぁ、これは私の趣味。親譲りのこの口調のせいで雰囲気が女性っぽくなってしまうのでね、少しは男っぽい怖い雰囲気が出せるかと思いましてな。

おや、ここでは文章だから、姿なんて見えないから意味が無いって?……それは言わんといてくだされな。

まぁ、私の怪談は倶楽部の皆と較べると大したことありませんが、聴いてやっておくんなまし。

これは私の、曾祖父の父である男、私の遠い先祖の昔話なんですけどねぇ―――







時は江戸時代。私の先祖である狼一(ろういち)という男は、とある城に使用人として仕えておりました。




ガラガラガシャン!

ビリィイィッ!

ドオオォン!

『姫様あぁぁ〜〜!!!』




何かが壊れる音と、何かが爆発する音、その後に困った様な誰かの声。これがこの城の日常の一片でした。

その原因となるのは城の姫様のお靏(おつる)姫。

この城は小規模な物でした。ですが、一応城なので、壺や掛け軸、戦で使う火薬や砲弾、武器等を置いてあります。

でも、ヤンチャなお靏姫様が壊したり傷を付けてしまい、城の者を困らせてしまいました。

そんなある日、城に姫様の教育係の女中が入って来ました。名を御津(みつ)と云います。

御津は本当にしっかりした女性で、ヤンチャな姫様を直ぐに飼い犬の如く大人しくさせてしまいました。


『いやぁ、御津は凄いなぁ!』

『あぁ、本当にな!俺達なんて姫様を羽交い締めして大人しくさせるのでやっとこさだったのに』

『本当本当!あの巧みな話術、美しい容姿、ほんと憧れちゃうわ〜』

『あんなに完璧なのに、それを一切鼻にかけないのがまた良いのよねー!』


あっという間に、御津は城中の人気者になりました。

ですが、城の中で唯一、それを面白く無いと思う人物がおりました。


お靏姫です。


お靏姫は城の者に構って欲しくて問題を起こしていたのに、御津が城に来たせいで、誰も自分を見てくれません。

また何か悪戯をしようとしても、原因となる人物、御津が止めてしまいます。

そこで、姫様は一つ御津を困らせる良い案を思い付きました。