『?!』


少し驚いたよ。てっきりSFとかかと思ってたのに。って、榊さんは当時びっくりしてたみたい。

でも、部活熱心な後輩に文句は言えない。

榊さんもホラーはよく書く方だったから、しっかり指導していく事を決めたの。


その日の放課後、早速パソコン室を借りて作業を始める事になった。

シオリさんは物語を書きながら考えるタイプだから、プロットを作る必要が無かったんだって。そうこうしているうちに、彼女の手はあっという間に話の中盤を創り出していたの。


『シオリ、なんで急にホラーなんて書こうと思ったんだ?』


シオリさんが打ったり考えたりしている間暇だった榊さんは、何となく聞いてみた。

キーボードを打つシオリさんの手が止まった。


『―――物語の中だけでも良いから、あの人達を……』

『え?ごめん、あの人達を何?』

『いえ、なんでもありません』


声が小さくて聞こえなかったけど、榊さんはまあいいや。で済ましてしまった。


そして、数日後、シオリさんの作品は完成した。タイトルは『黒化粧』。勿論それは入賞した。


シオリさんが授賞式に行った時、事件は起こった。


一人の男子高校生が屋上から飛び降りて亡くなったのだ。