[路地裏の彼]




語り手:五年霰組、三毛神 現宇(みけがみ あろう)





「……ども。俺三毛神 現宇……はぁ、これ喋んなきゃ駄目?ダルいんだけど。

……何、新入り。その期待に満ちた目やめて……あー、分かった分かった。話す話す。

めんどいから短めのやつね。


これは、俺の弟の友達の実体験なんだけど……


そいつの名前はルト(仮)。

当時小学校の……何年だっけか、多分三年生頃の話。


『また明日遊ぼーぜ〜』

『おー、またあの秘密基地集合な!』


ごく普通の住宅街で、ぶんぶんと手を振りしばしの別れを告げる男児二人。

その日は夏休みの夕暮れで、俺の弟と遊んだ帰りだった。

弟と曲がり角で別れ、自分の家に向かう途中の事。


『……痛っ』


ルトは突然の腹痛に襲われ、倒れた。

胃を切り裂かれたような痛み。

口からは胃液が吐かれ、声も出ず、身をよじる事しか出来ない。

助けて。誰か助けて。

誰かが通るのを待つしかなかった。


『どうしたの?お腹痛い?』


誰かがルトの前に立った。

頭を動かし見上げると、同い年くらいの少年がいた。

両手をパーカーのポケットに入れ、フードを被っている。

顔はよく見えないが、多分見た事ない、知らない子だ。

おそらく、ここら辺の子ではない。

誰だろう……?


『これ食べると良くなるよ』


少年は瓶に入ったラムネ菓子を取り出し、ルトの口の中に入れた。

危ない薬かと思ったが、全然苦くない。

しかもすぐに体調も戻った。