そしてイズミの社会科見学は終わり、家に帰った。

外が完全に暗くなった夜の九時。


『ただいまー』


イズミの父が帰ってきた。

いつも通りの帰宅の挨拶にビビってしまう。


『おかえりなさい。あら?手は大丈夫なの?』

『手?お父さんどうかしたの?』


たくみが首を傾げる。




『今朝、洗面台の棚から剃刀が落ちてね、お父さんの手に当たって怪我しちゃったんだけど、治ってるのよ。もう片付けたけど、イズミもたくみも気をつけてね』




鳥肌が立った。

昼間に会った時は、そんなもの無かった。








今目の前にいる『このヒト』は、本物の私のお父さん?




















どうだ?これでオレの怪談は終わり。

結構ゾッと来ただろ?ケケケッ。

あの後イズミ達は先生達に怒られたらしいけど、あの機械の方が怖かったみたいだぜ。

ブラック企業はこえーなー。社畜になりたくねーなー。

大人ってなんで息をするようにひでーことすんだろーな?

え?それを変えていくのがオレ達子供の仕事?

……へっ、良いこと言うじゃねーか!

でもよ、ずっと一緒にいたヤツが実は他人だった、って、結構ショックだよな。

本物が本物である証明なんて簡単にできるもんじゃねーし、偽物が偽物である証明も難しい。

もしかしたら、お前が見てるものも偽物かもしれないぜ?

例えば……オレとか、オレを含むこの怪談倶楽部のメンバーとか」


なんつってーwwwと冗談を言いながら、熱くないのか、喜登良は指先で蝋燭の炎を消した。

先程よりも重く暗い闇が、倶楽部室を呑むように支配していく。



蝋燭の火の熱が消えていくからか、なんだか空気が冷たく、寒気がする。