『どうする?一回降りる?』

『いや、せっかくだしちょっと見て行こうよ!』


ちかが悩むのも気にせず、好奇心旺盛なイズミは奥へと進む。

ちかとあつこもイズミに続いて歩き出した。


『ん?何これ?』


机や椅子が適当に置かれた物置のような場所だったのに、急に大きな機械がドンと置いてあった。

人一人が入れるくらいの大きさだ。


『動いてるね』


ガション、ガション、とコピー機のように動いている。

何なんだろうか、この機械は。

興味が湧いた三人は、機械の周りをぐるっと見てみることにした。


『最初にいた所が真後ろだから……そろそろ正面か、な……?』



ゴトン



『きゃあああああ!!』


ちかが叫んだ。

機械から出てきたのは……


『お、父……さん……?』


イズミの父親だった。

いや、違う。よく似た偽物だ。さっき会った時とは、スーツとネクタイの色が違う。

驚いている間にも、ゴトンゴトンと『それ』は放出されている。


『ね、ねぇ、あれ、さっきの休憩スペースにいた女の人じゃない?』


あつこがちかにしがみついた。

派手なアイシャドウの色が違うが、確かにあの女の人も確かにいた。


『……これ、もしかしてここの会社員のクローン人間作ってるんじゃない?』

『そ、そんなの……!』


視線を前に向けると、人の山があった。

一瞬屍かと思ったが、僅かに動いてる。まだ生きているようだが、なんだか気味悪さが増す。

『そういえば、前にお父さん、ここの会社はちょっとブラック気味だって言ってた……』


ちかが要らないことを思い出して発言する。


『もしかして、もしかしてなんだけど、『本物』の会社員と、ここで作られた『クローン人間』が入れ替わってるんじゃ……』

『ちか!馬鹿な事言わないでよ!そんな訳……』


あれ?

この会社でクローン人間と本物が入れ替わる。という事は、いつも家に帰ってきているのは偽物であるクローン人間……

という事は、さっき会ったのも……


『そんな訳……』


背筋が凍る。

もし本物がダメになったら、クローン人間と交換、そのクローン人間がダメになったらまた別のクローン人間と交換。

じゃあ、本物は?






三人は悲鳴をあげて、エレベーターでクラスメイト達のいる1階まで戻った。