[ストック・カンパニー]




語り手:三年曇組、雀夜 喜登良(すずめや きとら)





「押忍、雀夜 喜登良だ。よろしくな。

オレで五つ目の怪談になんのかな?蝋燭もあと三本しかないけど……新入生、大丈夫か?怖いか?もしかして怖くて震えてんのか?

……だよな、んなわけねーよな!こんなんでビビってちゃ、怪談倶楽部には入れねぇ。良い度胸してんな、気に入ったぜ。

そんじゃ、まぁ本題に入りますか。




これは、オレの幼馴染みのマジ話―――







オレの幼馴染み、イズミ(仮)のお父さんは、ごく普通のサラリーマンだ。

毎朝満員電車で潰されながら通勤して、会社では上司にペコペコ頭下げて、帰りは時々同僚の人と居酒屋に行ったり、たまにイズミやイズミの弟のたくみにお土産を買ってくれる。

どこにでもいるような、超平凡な父親だった。



とある日、彼女の学校で社会科見学が行われた。場所は父親の会社。

会社名は、『Stock company(ストック・カンパニー)』。小洒落た名前だけど、中身は普通の会社。

普通の会社員の仕事見たって、面白くもなんともねぇと思うけど、こういうところが一番就職率高いから勉強になるだろう、っていうのが先生の言い分らしい。

社員は皆書類整理したり、資料作成したり、電話に応答したりのデスクワークばかりで、当たり前だけど見ていてつまんなかったそうだ。


『ねぇイズミ、ちょっと抜け出しちゃわない?』

『ちかもあたしも何回かここに来たことあるし、大丈夫だよ』


退屈してきたイズミの友達、ちかとあつこが、こっそり探検しないかと誘った。

ちかとあつこの父親もここで働いているらしく、忘れ物を届けたりして何度か来ていたとのこと。


『そだね。先生にバレても、お父さん達に誤魔化してもらうか、迷ったとか言っときゃ平気だよね!』


そう言って、イズミ、ちか、あつこの三人は
、こっそりとクラスメイト達と反対方向へ小走りで移動した。

エレベーターにのりこみ、とりあえず閉めるボタンを押す。


『ねぇ、あつこ。どこ行く?』

『そうだな〜、とりあえず、あたし達のお父さんのいる階に行かない?』

『良いね!びっくりさせちゃお!』


ちかが4Fのボタンを押した。



チーン



数秒後、エレベーターの扉が開いた。

ちょうど目の前が休憩スペースで、自動販売機や観葉植物が置かれている。