……
『屋澤(やざわ) まり!』
『は〜い』
『横山(よこやま) みか!』
『はい』
『綿貫(わたぬき) さえ!』
『はい〜』
……これで、『全員』の出席が取れた。
これで終わった。出席簿をパタンと閉じた音だけが、教室に響く。
『……ねぇニナちゃん、終わったの?』
隣の席のまりが話しかけてくるが、そんな事、ニナにも分からない。
お願いともえちゃん、何か反応示して……
膝の上で固く手を握った、その時だった。
カチャン
『!!』
先生の後ろの黒板のチョークが、浮き上がった。
『お、おぉ……?』
先生は驚いて、端の方へと後ずさる。
浮かんだチョークは、黒板に文字を記していく。
『お、ど、り、ば、の、か、が、み……踊り場の鏡?』
みかが文字を読み上げる。
『踊り場の鏡の前に来てほしいって事……?』
『さえの言う通りかもしれねーな、皆、行ってみよーぜ』
まさきの言葉で、全員が階段の踊り場に向かった。
この学校の鏡は大きく、三十人以上が前に並んでも、充分大体の全身が見られる。
『あ!』
ひかりが小さく叫んだ。
このクラスにいないはずの一人、でも、ちゃんといるクラスメイト。
ともえの姿が鏡には映っていた。
ともえは緩い三つ編みを揺らすと、にっこりと微笑んだ。
『ともえちゃん……』
ニナが呟いた。
『ゴ、メ、ン、ネ』
声は聞こえないが、鏡に映る姿の口元が、そう動いた。
『ア、リ、ガ、ト、ウ』
最後に感謝の気持ちを唇に乗せながら、ともえは溶けるように消えていった。
その後、ニナのクラスで起こるイタズラもどきの騒ぎは無くなった。
夕日でオレンジ色に染まる帰り道、細長く伸びた影を引きずるようにして、七人は歩いていた。