『皆、逃げて!!全員ステージの方に避難ー!!!!!』


担任が大声で叫ぶ。

上から電球が落ちてきたのだ。



『危なかったね〜、ひかりちゃんがこっち戻って来なかったら、私達下敷きになってたよ』


幸い、この事故による怪我人は出なかった。殆どの人がひかりを心配して、ステージ側に行ったからだ。


『ねー、ラッキーだった……あ、ごめん、ひかりは別の怪我してたんだよね、ラッキーなんて言ってごめん』

『ううん、大丈夫だよ。まりちゃんこそ、怪我がなくて良かった!』


ニナは心に針が刺さったような、妙な胸騒ぎがした。

電球の落下に、ひかりの腕の怪我。同時に二つもこんな事が起こるなんて。




数日後、この事件は一回では済まなかった。


『あれ?一つ足りない……』

『まさきくん、どうしたの?』

『いや、オレの教材が一つ足りないんだよ』


何か一つ、誰かの物が無くなったり……


『ねえちょっと!アタシのスカートの裾切ったの誰ー?!』

『みか、落ち着きなよ。裁縫道具持って、そっちで繕ってきたら?』

『んもー!!』


誰かの私物が壊れたり、悪戯されたり。

そして決まって、その後に事故等が起こる。


まさきが隣のクラスに教材を借りに行ったあとに、校庭からボールが飛び込んできて窓ガラスが割れたし、みかが更衣室でスカートを縫い直してる時に、天井に下げていた図工の作品が落ちてきたり。

二人共その場から動かなかったら、確実に大怪我をしていた。

『もー!!何なの、最近のうちらのクラス!!』

『怒らないでよ、まほ〜。偶然事故が重なっただけでしょ?』

『るいの言う通りだよ、怪我人がいないんだから、ラッキーじゃん』

『るいとさえは呑気すぎ!危機感持ちなよ、次こそ怪我人どころか死人が出るかもしれないんだよ?!』


学級委員長のまほが、とうとうキレ出した。

無理もない。呪いにでもかかってるのかというくらいの頻度で、こんな事が起こっているんだから。


『誰なの?!こんなイタズラするの!』

『まほ……』


休み時間になると、ニナは担任に相談する為、職員室へ向かった。

最初にこの事件が起こったのは、ニナのチームがバスケをやっていた時。何か自分と関係あるのかもしれない。

それに、せっかく仲の良いクラスなのに、お互いを疑い合うような事は起きて欲しくない。


『先生……最近の事故について相談があるんですけど』

『あぁ……私もそろそろ何か対処しようと思って、考えてたんだよ』

『先生は、何か原因の目星は付いてないんですか?』

『……これ、内緒の話ね。心当たりはあるんだ』