出会ったのは、真弓が大学三年生の冬。



木枯らしが吹き始めクリスマスソングが街全体を覆い尽くす時期だった。


アルバイトの給料日過ぎということもあって、財布の中は潤っている。新しいワンピースにマキアージュの新作リップを唇に付け、真弓は上機嫌だった。


携帯のバイブがメールの着信を告げ、真弓はスマートフォンを鞄の中から取り出す。


つい先程、スマートフォンカバーを二千円でオリジナルカバーに変えたばかりだった。


ポンと音がしてスマートフォンを見るとLINEにメッセージが届いている。


内容を見た瞬間、真弓の指は画面をスライドし、電話の通話履歴へと移行していく。


目当ての名前を発見すると、彼女は躊躇する間もなくコールボタンを押した。


四コール目。相手は真弓の電話に出る。


「あ。真弓?今どこにいるの?」


「渋谷だけど。スマホのカバー新しくしてた。前に、ゆかりがお台場で可愛くしてきたじゃん?」


「ええ?あれ、渋谷でも出来んの?いいなー。まだ、やってる感じかな?じゃなくて、真弓。今ひま?」


「暇じゃなかったら、こんなクリスマスイルミネーションばっかのとこに、一人でいないっしょ」


「確かに」


「即答すんなし」


「暇な真弓さんにお願い」


「どうした?」


「パーティーという名の合コン出て」


「合コン?どことやんの?」


「学校は色々!でも有名大学の子も沢山来るよ。多分イケメン有り」


「まじで?やばくない?私じゃなくても、人数集まるっしょ」


「それが、ちょっと異質でさ」


「異質?」


「外国人がたくさんいる感じ?真弓、英語出来たよね?日常会話程度なら。英会話の授業でけっこう褒められてたの覚えてるよ」


「は?」


「なんか、うちの彼氏が異文化交流のサークルのリーダーやってんじゃん」


「言ってたね。カンボジアとかのボランティアやってるって」


「そうそう、そのサークルのパーティーがあるらしいんだけど、その後の内輪だけの打ち上げで可愛い子必要らしい」


「なんか、危なそう」


「そう言われて、断られたの、五件。真弓、お願い!来年就活始まるけど、代返してあげるからさ」


「えー」


「お願い!お願い!外国人って言っても、イギリス人とかアメリカ人とかだから」


「何でそこ限定?」


 笑いながら、考える。


大丈夫なのかと。


新しくしたスマホのカバーを指でさすりながら、ラインストーンの感触を確かめた。


「大丈夫だって、うちの彼氏もいるし。うちもいるからさ。危なくなったら、逃げてくればいいじゃん。まゆみぃー」


懇願といった感じに近い友人に、真弓は「うーん」と唸りながらも


「じゃあ、ちょっと参加するだけなら」


と了承の意を告げた。