だけど、心のどこかでは満更でもないと感じている自分がいた。

何なのよ、もう…。

夫と言うよりも保護者と言った方が正しいかも知れない。

「ライブ、楽しかった?」

そう思っていたら、朝比奈さんが話しかけてきた。

「ええ、とても」

あたしは答えた。

「俺、最近音楽聞かないからよくわかんないんだけど…他に好きなアーティストがいたら教えて欲しいな」

「どうして教える必要があるんですか?」

「小春ちゃんのことが知りたいから」

「嫌です、教えません」

いつも通り、会話を強制終了させた。

何であたしのことを知りたがるんだろう?

あたしが夫と認めていないことに、彼は気づいていないのだろうか?

そう思いながら息を吐いた後、窓の外に視線を向けた。