Leben〜紫陽花の強い覚悟〜

オペ室を出ると水道の傍にあるゴミ箱に手術着一式を捨てる。


このゴミ箱も余計なものを触らないように脚で踏んでフタを開けるタイプになっている。


そしてようやく手を洗う。


オペ前よりは簡単にだが隅々まで洗う。


洗った手を紙のタオルで拭った。


共用のタオルでは衛生的ではないからである。


手を拭いた紙タオルをゴミ箱に捨てると、ようやくステーションへ向かうことが出来る。


ステーションへ戻ったらカルテの記入が待っている筈だ。




「お疲れ様、大変だったみたいだね」


ステーションに入る手前でポン、と肩に手を置かれた。


「そうでもない」


その手を払い、神崎を無視してステーションへ入って行く。


「あ、そういえばね。

これ神那ちゃんに渡してって言われたんだった。

なんでも男の人が持って来たらしいよ。

僕はナースに代わりに渡してって頼まれただけだから」


はい、とそれを手渡す。


「手紙?」


受け取ったそれを一瞥する。


「みたいだね」


差出人の名前はない。