Leben〜紫陽花の強い覚悟〜

ヘリは一報を受けてから離陸するまで平均約3分。


離陸が遅れればそれだけ助かる命も少なくなる。


10分遅れれば1つの命が失われると言われている。


だから走って向かう。


「行ってらっしゃい、神那ちゃん。

ホントは廊下走っちゃダメなんだけどね」


余裕で手を振る神崎。


それもその筈、今日のヘリ担は私だから。


「あっ、俺も行きますっ」


「要らない、邪魔だから」


使えない人間が居ても足手まといなだけ。


救命医療に必要なのは腕と経験、才能、速さだから。


「ですがっ…」


「ムダだよ、水原ちゃん。

もう薄々分かってると思うけど神那ちゃんは合理主義者だからね」


ムダなことをとことん嫌う。


奇跡を信じることも、運命を感じることも、神にすがろうとすることさえも。


神那ちゃんにとっては全てムダな行為。


「話には聞いてましたけど…」


「彼女から教えて貰うのは難しいだろうけど学べることはたくさんあるから。

頑張ってね」


教えることはしないけど見て学ぶことなら出来る。


教えて貰う、じゃなくて見て学ぶ。


つまり技術を盗む、それが神那ちゃんが重きを置いていること。







病室からそのままヘリポートへ向かい、乗り込む。


我々が乗りやすいように両方のドアを開けてある。


右側から乗るのはフライトドクター、左側から乗るのはフライトナース。


ヘリには操縦席にパイロットと整備士、後ろにドクターとナースの計4人が乗っている。


右側の席、つまりパイロットの後ろの席にはフライトドクターが。


左側の席、つまり整備士の後ろの席にはフライトナースが乗っている。


ヘリが離陸すると消防に詳しい情報が入っているかどうかを無線で確認する。