「調子に乗らないで」


「はいはい。

もー、素直じゃないんだから」


素直さは外科医にとって必要ない。


「煩い。

神崎、明日のヘリ担よろしく」


ヘリ専用無線機を手渡す。


「ん、分かってるよ。

神那ちゃんも今日の当直頑張ってね」


「言われなくても」


「水原ちゃんも頑張ってね。

神那ちゃんと同じスケジュールじゃ大変だろうけど」


何せ1週間ほとんど休みがない。


例えあったとしても緊急のオペに呼び出される。


「はいっ」


「お疲れ様っす。

神崎先生、霜月先生」


藍色のユニホームに聴診器を首から掛けた医者が入って来た。


救命に身を置く医師のユニホームは藍色。


フライトドクターは何かと走ることが多いので聴診器は首にかけずポケットに入れている。


「お疲れ」


「おー、お疲れ様。近藤くん」


「お疲れ様っす、えーっと…」


「あ、水原紫音です。

本日付けで勤務になりました、フェローです」


「ん、よろしくー」


形成外科の近藤稔(コンドウ ミノル)。


腕はそこそこ、言葉は軽い。


明るい金髪に右耳にピアスを付けている。


どんなことがあっても自分の命は預けたくない人物。