Leben〜紫陽花の強い覚悟〜

ポケットに入れてある華奢な形の腕時計を確認する。


「そろそろ外してから30分経つ。

今日はここまで」


「うん。またね?

神那先生、水原先生」


「また」


「またね、瑠璃ちゃん」


点滴のチューブを繋いでから病室をあとにする。





人を避けながら廊下を歩いた。


「あの、瑠璃ちゃんってどこが悪いんですか?

見たところ元気そうですけど」


点滴はしてたけどそれ以外に気になるところはなかった。


顔色も普通だし、知的障害とか、言葉が上手く話せない様子もない。


「見たところはね。

カルテ読んで、そうすれば分かる」


決して自分の口からは説明しない。


「わっと…すみません」


スタスタ歩く神那先生に小走りで着いて行くと、患者さんとぶつかりそうになる。


それぐらい混雑しているんだ。


ステーションに着き、それぞれの席に座る。


「あ、水原ちゃんの席は神那ちゃんの隣ね?

右隅の方。

即席で設けたやつだからちょっと雑だけど」


「大丈夫です、ありがとうございます」


用意して貰えるだけ有難い。


「水原ちゃん、いつまで続くかな?

ここに来るフェローは皆すぐ辞めちゃうんだよ」


神那の向かいにある自分の机に肘をつき、シャーペンを弄びながら呟く神崎。


「え、そうなんですか?」